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『マンダレイ』 [映画(・・・?)]

映画界の異端児、ラース・フォントリアー(個人的にはこの監督、好きじゃない)の『ドッグヴィル』に続く”アメリカ三部作”の第二弾が本作。ショッキングな内容と結末で衝撃的だった前作に比べると、こちらのストーリーはややおとなしめ。ただ、政治的風刺と皮肉、説教臭さは前作を上回っている。『ドッグヴィル』でヒロインのグレースを演じた二コール・キッドマンが今回も続投するはずだったが降板したため、『ヴィレッジ』のブライス・ダラス・ハワードが扮した。前作と同様、壁やドアがなく、線を引いただけの床に限られた数の大道具や小道具。まるで舞台演劇のような空間で物語が展開される。
そして、今回のテーマは奴隷制度である。

「こんな町さえなければ、世界はもう少しマシになるわ」とドッグヴィルの町を焼き払ったグレース。父親も含めたギャングたちと新たな居住区を求めて彷徨ううち、マンダレイという名の大農園にやってくる。その農園では、70年も前に廃止されたはずの奴隷制度がまだ残っていた。グレースは使命感を露にし、「黒人に自由を」と掲げ、自らこの地に住むことを希望する。「奴隷を作り上げたのは私たち白人」と言い、ドッグヴィルで学んだ”力の行使”を利用して平和をもたらそうとするグレース。理想主義に燃える彼女は、ことごとく彼らの生活に介入するが、その”善意”は、理想と現実のギャップを生むだけだった。そして、マンダレイの秘密がグレースを待ち受けていた・・。
ああ。ここまで露骨なんて。グレースはイラク戦争を起こしたブッシュそのものだ。そして、グレースは『ドッグヴィル』での経験を全く理解しておらず、むしろもっと馬鹿になっているし・・^^;ストーリー的に惹きつけるものがあった『ドッグヴィル』に対し、本作は、アメリカの歴史(例えば、奴隷解放によって突然自由を与えられた奴隷たちが暴動を起こし、かつての主人に自分たちを又雇って欲しいと懇願したが拒否されたため、黒人たちは主人を殺してしまったという史実)やアメリカの説く”自由”を考察するためにいい映画と言える。
ブライス・ダラス・ハワードはちょっとミスキャストだったかも。頑張っているけど、やはり二コールに比べて表現力は劣るし、淡白すぎて個性が感じられない。『ヴィレッジ』公開以前に本作の主演が決まっていたというが、まだこれだけのキャリアでいきなりラース監督作品の主演には早すぎたのではと思う。
アメリカ嫌いや物好きな人にはおススメ^^;

2006年3月、日比谷シャンテシネにて公開


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