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『ツォツィ』 [映画(社会・世界)]

2006年のアカデミー賞で、アフリカ映画初の外国映画賞受賞の快挙を成し遂げた話題作がようやく日本で公開される。元南アフリカ大統領のネルソン・マンデラも、本作の監督、出演者に対面した際、「自分もかつてはツォツィ(不良、チンピラの意)だった」と語ったという。スラム街に住む”ツォツィ”と呼ばれる一人の少年が小さな命と出会ったことで、それまでの怒りや憎しみから解放されていく感動作だ。

南アフリカ最大の都市ヨハネスブルク。その最大の旧黒人居住区ソウェトのスラム街にツォツィと呼ばれる少年が居る。彼は仲間と共に暴力的で無軌道な生活を送り、窃盗やカージャックを繰り返しては怒りを糧に生きてきた。そんな彼が、ある裕福な家庭の車を盗む。車の主である黒人女性を撃ち、猛スピードで逃げるツォツィ。後部座席から赤ん坊の泣き声が聞こえたのはその直後だった・・・。

劇中、当然暴力的なシーンは多いが、赤ん坊の愛らしさに癒される。
結局、ツォツィは赤ん坊を連れ帰り、仲間にばれないようこっそりと世話をする。しかし、慣れないツォツィにとっては困惑することばかり。同じ居住区に住むシングルマザーを脅して(!)乳をやるよう命令し、彼女に一時的に預けたりして何とか乗り切る。映画では、ツォツィがこのシングルマザーや浮浪者の男性に出会って彼らの境遇を知るエピソードもあり、憎悪や悲しみの中で生きているのは自分だけでないことも知る。赤ん坊という、弱くて小さなものに対して溢れ出る優しさは、人間の本能的な感情だ。ツォツィはそれを失ってはいなかった。「生きること」の価値を見つめなおした少年は、ついに赤ん坊を返しに行く。ラストに用意された緊張と胸を揺さぶる感動は、多くの映画を観てきた人にとっても忘れられないシーンとなるだろう。

ストーリーだけ見ても充分に引き込まれるが、アパルトヘイトが終演して10年経つ南アフリカの現状をリアルに描いた点にも注目したい。我々日本人から見たら全く世界が違うが、現地ではツォツィのような人を身近に知る人が殆どだという。貧困やエイズ、治安など、今なお南アフリカが抱える深刻な問題にも迫っている。
ツォツィを演じるのは舞台でキャリアを積んだ新星プレスリー・チュエニヤハエ。圧倒的な存在感でツォツィの心情を表現し、高い評価を得た。

キーワード;
殺人、BMW、強盗、銃、赤ん坊、コンデンスミルク、紙袋、モビール、新聞紙、犬、土管、パトカー

TSOTSI
2005年イギリス・アフリカ
監督:ギャヴィン・フッド
出演:プレスリー・チュエニヤハエ、テリー・ペート、ケネス・ンコースィ、モツズィ・マッハーノ他

4月、TOHOシネマズ六本木ヒルズ他にて公開


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