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『出口のない海』 [映画(青春)]

大ヒット作『半落ち』の原作者・横山秀夫と監督の佐々部清が再び組み、また一つ日本人の心に響く感動作を作り上げた。脚本に山田洋次と『うなぎ』の冨川元文を迎え、主演はこれが映画初出演となる市川海老蔵、他は伊勢谷友介、柏原収史、塩谷瞬、上野樹里ら、映画界の期待の若手たちが顔を揃えた。敗戦が色濃くなった頃の日本を舞台に、海軍の秘密兵器に束の間の青春を捧げた若者たちの悲劇を描く。

1945年、1隻の潜水艦が敵の攻撃を交わしながら進んでいく。艦内には、甲子園の優勝投手だった並木、並木の同級生でマラソンランナーとしてオリンピックを目指していた北、明るくよく喋る佐久間、皆の弟分的存在の沖田が乗り込んでいた。彼らは死ぬためにここに居た。日本が敗戦を目前にしながら開発した最終兵器”回天”に乗るのだ。定員一名、脱出装置なし。爆薬を大量に積み敵艦に激突する、いわゆる人間魚雷である。敵艦の次の攻撃まで、彼らはそれぞれの青春を振り返る。並木には大切な家族と可愛い恋人が居た・・。

特攻隊を扱った映画に比べ、人間魚雷の話は意外と少ない。いずれにしても、”お国のために”と未来ある若者たちを捧げた、痛ましいまでの日本の姿だ。この頃の日本は少し狂っていたのかもしれない。この映画に登場する若者たちは、志願して海軍に入隊する。突撃準備の体勢になり、心の中で父や母に別れを告げ、死を覚悟するが、故障で突撃注視になったりもする。ここで彼らは命拾いをするわけだが、彼らにとっては生きて帰ることは恥。運がいいはずのことを運が悪かったと思わねばならないなんて、どうかしている。でも、当時はこれが”サムライ精神”だった。戦争がもたらした、この時代の若者の強さは、今の若者たちにはない。果たして必要な強さかどうかは分からないが、少なくとも、毎日毎日を大切に生きていたことは確かだ。何とも皮肉だと思う。時間軸がバラバラなので順序がちょっと分かりにくいが、よく出来ていた。もうちょっと笑いを取り入れた場面があっても良かったかも。並木を演じる海老蔵の演技も硬いので、全体的に映画のイメージは重い。海老蔵、顔が大きいし(伊勢谷友介と並ぶと特にそう見える)、体型も重たく、年齢より老けて見えるのが難点。伊勢谷友介がクールなキャラクターで存在感がある。上野樹里は本当にいろいろな役をこなす女優で、本作では清楚で可憐な並木の恋人役を好演。

キーワード;
野球、キャッチボール、マラソン、回天

2006年日本
監督:佐々部清
出演:市川海老蔵、伊勢谷友介、上野樹里、塩谷瞬、柏原収史、伊崎充則、香川照之、古手川祐子、三浦友和他

9月16日より全国公開


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